泌尿器

前立腺がんの症状

前立腺がんとは

前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲んでいます。大きさはクルミほど、形もよく似ています(図1)。

内部は、尿道を取り巻く「移行域(内腺)」、その外側の「中心域」、それらを包み込むように存在する「辺縁域(外腺)」の3つに分けられます。

前立腺がんは男性の生殖活動や排尿コントロールを担うこの前立腺にできる男性だけにみられるがんで、もっとも増えているがんの1つです。2011年の統計によると、わが国で新たに前立腺がんと診断された人は7万8,000人で、男性のがんでは胃がんに次いで第2位となっています(図2)。

図1 前立腺の位置と構造・横からみた図

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図2 部位別がん罹患者数

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また、患者数の増加に伴って死亡率も1990年代まで急激な増加を示していましたが、その後は横ばい状態が続いています。死亡順位でみると、前立腺がんは肺がん、胃がん、大腸がん、肝がん、すい臓がんに続いて6位となっています。

特徴

前立腺がんには、次のような特徴があります。

高齢者に多い

一般にがんは加齢とともに増えていきますが、とりわけ前立腺がんは年齢との関係が深く、60歳代以降から急激に増加し、年齢が上がるほどほど患者数は多くなっていきます。

進行がゆっくり

他のがんに比べ、ゆっくり進行します。このため早い段階で見つかれば、完全に治すこともできます。また、80歳代以降に見つかった患者さんの場合、進行が遅いので、治療せず、生活の質(QOL)を保ちながら、経過を観察するという選択も可能です。

症状が出にくい

初期にはほとんど症状がありません。排尿障害(おしっこが出にくい)などが現れるのは、がんがかなり進行してからです。

骨転移しやすい

前立腺がんは、骨盤の骨や腰椎などに転移しやすいのが特徴の1つです。骨に転移すると、腰や背中が痛むようになり、それによって前立腺がんと気づくこともあります。

症状

初期の症状

前立腺がんの代表的な症状は排尿障害です。これは、おしっこの通り道である尿道が、圧迫されるために起こります。しかし、初期のうちはほとんど症状が現れません。

進行に伴ってみられる症状

前立腺が進行すると、次第に尿道が圧迫されるようになり、頻尿、排尿困難など排尿障害がみられるようになります。

転移した場合にみられる症状

前立腺がんが骨に転移すると、背中や腰の痛み、足のしびれなどが起こってきます。

原因

前立腺がんの原因はまだよくわかっていませんが、危険因子として年齢(高齢)、男性ホルモン、遺伝、食生活などの生活習慣などが考えられています。

検査と診断

前立腺がんの検査は、
①がんの可能性をチェックする「スクリーニング検査」、
②がんの疑いがあった場合、診断を決定する「確定診断」、
③がんの広がりや転移を調べる検査
――という順で行われます。

スクリーニング検査
前立腺特異抗原(PSA)検査

PSAは、前立腺で作られるたんぱく質の1つです。前立腺にがんができると、血液中に流れ込むPSAの値が高くなります。この値を調べて、前立腺がんをスクリーニングするのが「PSA検査」です。前立腺がんの症状がまったくなくても、前立腺に異常があるとPSAが高くなるため、早期発見に役立ちます。

ただし、PSAは前立腺肥大症などでも高くなることがありますし、前立腺がんがあっても必ずしも高くならない患者さんもいるので、「PSA高値=前立腺がん」というわけではありません。

なお、PSA検査は厚生労働省が推奨するがん検診には含まれていませんが、全国の7割以上の市区町村では住民健診に加えています(公益財団法人前立腺研究財団による調査 2012年)。

直腸指診

肛門から薄い手袋を着用して指を直腸に入れ、直腸の壁越しに前立腺に触り、前立腺の大きさ、表面が平らか、でこぼこしているか、硬いか弾力があるかどうかなどを調べます。

 

超音波検査(経直腸エコー)

肛門から超音波の発信機(プローブ)を直腸に入れ、前立腺の断面を映し出す検査です。前立腺の大きさや内部の状態を調べることができます。

前立腺がんを確定診断するための検査
生検

前立腺の組織を切り取って、顕微鏡で調べる検査法です。PSA検査、直腸診断、超音波検査などで前立腺がんの疑いが濃い場合には、この生検を行い、前立腺がんかどうかを確定します。

前立腺がんの広がりや転移を調べる検査

前立腺がんの進行度(大きさ、広がり)や転移の有無を調べるためCT、MRI、骨シンチグラフィーなどの画像検査を行います。

CT、MRI検査

CT検査は、リンパ節転移の有無や、がんが前立腺の周辺まで広がっているかどうかを確認するために行われます。一方、MRI検査は、がんが前立腺のどこにあるのか、前立腺の中にとどまっているか、周囲の臓器に広がっていないかなどを調べるのに適しています。

骨シンチグラフィー

前立腺がんは骨に転移しやすい特徴を持っており、その検査に欠かせないのが骨シンチグラフィーです。アイソトープ(放射性同位元素)を静脈に注射し、特殊なカメラで撮影します。アイソトープは、がんのある部分に集積し、黒く映し出されるので、骨に転移しているかどうかがわかるのです。

前立腺がんのステージ(病期)

前立腺がんの治療方針を決定する場合には、「ステージ(病期)」や「悪性度」などの判定が重要になります。

ステージ分類

ステージは、がんの進行度を示すもので、触診や超音波検査などの画像診断のデータに基づいて判定されます。ステージ分類としては、国際対がん連合(UICC)が作成した「TNM分類」という方法が、世界標準として用いられています(表1)。TNMとは、Tumor(腫瘍、原発巣)、Nodes(リンパ節)、Metastasis(転移)というそれぞれの頭文字のことです。

表1.前立腺がんのステージ分類(TNM分類)
T1 T1 直腸診でも画像検査でもがんは明らかにならず、前立腺肥大症や膀胱がんで手術を受けて偶然に発見された場合
T1a 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下にがんが発見される
T1b 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えた部分にがんが発見される
T1c 針生検によってがんが発見される
T2 T2 前立腺の中にとどまっているがん
T2a 左右どちらかの1/2までにがんがとどまっている
T2b 左右どちらかだけに1/2を超えるがんがある
T2c 左右の両方にがんがある
T3 T3 前立腺をおおう膜(被膜)を超えてがんが広がっている
T3a 被膜の外にがんが広がっている(片方または左右両方、膀胱の一部)
T3b 精のうにまでがんが及んでいる
T4 前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)にがんが及んでいる
N0 所属リンパ節への転移はない
N1 所属リンパ節への転移がある
M0 遠隔転移はない
M1 遠隔転移がある

がん情報サービスが日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編「前立腺癌取扱い規約 2010年12月(第4版)」(金原出版)をもとに作成

「T」は、がんの広がりや大きさを表し、T0~4の5段階に分けられます。「N」は前立腺の近くにあるリンパ節への転移の有無で、N0なら「転移なし」、N1なら「転移あり」となります。

「M」は前立腺から離れた臓器や骨への転移を示し、M0なら「転移なし」、M1なら「転移あり」と分類されます。

TNM分類では、この3つからステージを判定します。

悪性度の分類

前立腺がんでは、ステージ分類とともに、「悪性度」の評価も大事です。がんには、おとなしく進行の遅いタイプや、増殖が早く転移しやすいタイプ、その中間のタイプなど様々なタイプがあります。こうしたタイプを調べるのが悪性度の検査です。評価には「グリーソン分類」(表2)というスコアが用いられます。

表2 前立腺がんのグリーソン分類
超低リスク T1c、グリーゾンスコアが6以下,PCA値が10mg/mL未満、前立腺生検の陽性コア数が3未満、全コアでのがんの占拠率が50%以下、PSA密度が0.15mg/mL/g未満
低リスク T1〜T2a、グリーゾンスコアが6以下、PSA値が10mg/mL未満
中間リスク T2b〜T2cまたはグリーゾンスコアが7またはPSA値が10〜20mg/mL
高リスク T3aまたはグリーゾンスコアが8〜10またはPSA値が20mg/mLを超える
超高リスク T3b〜T4

国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービスより引用

主な参考資料

  • 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
    http://www.ncc.go.jp/jp/cis/ganjoho.html
  • 別冊NHKきょうの健康「前立腺肥大症・前立腺がん」NHK出版 2010年
  • 日本泌尿器科学会編:前立腺がん診療ガイドライン第2版 2012、金原出版
  • 日本泌尿器科学会編集、前立腺がん検診ガイドライン2010年増補版、金原出版
  • 国立がん研究センターがん情報サービス:それぞれのがんの解説「前立腺がん」
    http://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/index.html

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