肝・胆

肝がん(肝臓がん)の治療

肝臓がんの病期(ステージ)

肝臓がんの病期は、がんの個数、大きさ、がんが血管および胆管にまで広がっているか(血管侵襲)、リンパ節へ転移しているか、他の臓器へ転移しているかによって判断され、ステージⅠ~Ⅳ期に分類されます。

たとえばステージⅠ期は、がんが1個で、大きさが2cm以下、血管まで広がっておらず、リンパ節や他の臓器への転移がない状態です。自覚症状はなく、多くは定期検査で見つかります。がんの数が増えたり、2cm以上だったり、リンパ節や他臓器への転移があると、ステージは上がっていきます。

また、肝臓がんの治療方針を立てる上で、病期とともに重要なのが「肝障害度」です。肝障害度は、
<A>肝障害がほとんどない(軽度)、
<B>症状が時々みられる(中等度)、
<C>いつも症状がある(重度)、
の3段階に分けられます。

肝臓がんの治療の進め方

肝臓がんの治療法は、「がんの数」、「大きさ」、「肝障害度(肝機能の状態により分類)」の3つを考慮して選択されます。

表1 肝障害度
  A B C
腹水 ない 治療効果あり 治療効果少ない
血清ビリルビン(mg/dL) 2.0未満 2.0〜3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 3.0〜3.5 3.0未満
プロトロンビン活性値(%) 80超 50〜80 50未満
ICGR15(%) 15未満 15〜40 40超

ICGR15:ICG(インドシアニン・グリーン)負荷試験値。肝機能を測定するための検査の値。

「肝臓がん診療ガイドライン2013」(日本肝臓学会)では「治療アルゴリズム」として、その指針を示しています(図1)。

図1 肝臓がんの治療アルゴリズム

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(日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013、金原出版」P13より引用
肝障害度のA、B、Cは「肝障害度」を参照

従来、肝臓がんの治療は、肝臓がんに詳しい医師が、自らの経験や技術に基づいて、独自の治療を行っていました。しかし、ガイドラインができたことによって、国内のどこに住んでいても、同じ基準に沿った標準治療を受けられるようになっています。

肝臓がんの主な治療法

肝臓がんの治療法には「手術療法(肝切除)」、「ラジオ波焼灼療法(RFA)」、「肝動脈化学塞栓療法(TACE)」、「化学療法(抗がん剤療法)」、「肝臓移植」などがあります。

表2 肝臓がんの主な治療法
1. 手術療法(肝切除)
2.局所療法 ラジオ波焼灼療法(RFA)
マイクロ波凝固療法
エタノール注入療法
3. 肝動脈化学塞栓療法(TACE)
4. 化学療法(抗がん剤療法)
5. 放射線療法
6. 肝臓移植
手術療法(肝切除)

肝臓を部分的に切除し、がんを取り除く方法です。肝障害の程度が「軽度~中等度」で、「がんの数が個以内」の患者さんが対象となります。

ガイドラインに沿っていいますと、がんの数が1個のケースは、がんの大きさ(直径)がどれぐらいであっても手術が第一選択です。がんが2個以上の場合は、がんの大きさによって治療法が異なり、3cm以内なら手術かラジオ波焼灼療法(RFA)、3cmを超えている時は、手術か肝動脈化学塞栓療法(TACE)が選択されます。がんが4個以上の場合は、手術の対象にはなりません。

手術療法は、医師が病巣を直接見ながら行いますので、がんを確実に取り除くことができます。ただし、お腹を切って(開腹)がんを切除しますから、患者さんへの負担は大きく、入院期間も2~3週間と長くなります。

ラジオ波焼灼療法(RFA)

超音波による画像で、がんの位置を確認しながら、体外から細い針を刺し、その先からラジオ波を発生させ、熱でがんを焼き固めてしまう方法です。肝臓の障害度が「軽度~中等度」で、がんの数が1個なら直径5cm以内、複数個なら3個以内かつ直径が3cm以内の肝臓がん患者さんが対象となります。

針を刺すだけですから、開腹する手術に比べて負担は軽くて済みます。1回の治療時間は最大でも12分程度で、入院期間も3~5日ほどです。がんの数が多かったり、大きかったりした場合は、2~3回に分けて治療することもあります。

ラジオ波焼灼療法が日本に導入されたのは15年ほど前ですが、現在では早期肝臓がんのスタンダードな治療法となっています。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝障害の程度が「軽度~中等度」で、がんの数が「4個以上」の患者さんが対象となる治療法です。がんが3個以内でも、直径が3cmを超えていて、手術が難しいケースではこの治療法が選択されます。

方法は、まず太ももの付け根から細い管(カテーテル)を入れ、肝動脈に送り込みます。そして、造影剤(リピオドール)に抗がん剤を混ぜたものを注入し、さらに特殊なスポンジ(ゼラチンスポンジ)で動脈を塞ぐ、というものです(図2)。がんへ流れる血液(栄養)をせき止め、がんを“兵糧攻め”する治療法で、多くのがんを死滅させることができます。

1回の治療時間は1~2時間程度、入院期間は10~14日ほどです。しかし、1度の治療でがんを完全に叩くのは難しいため、治療効果を観察しながら、数回繰り返すのが一般的です。

図2 肝動脈化学塞栓療法(TACE)

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進行肝臓がん患者さんを対象とした国際的な臨床試験(日本、韓国)では、平均生存期間は3.1年、1年生存率89.6%、2年生存率75.0%という成績が得られています。

Ikeda M, Arai Y, Park SJ, et al: Prospective study of transcatheter arterial chemoembolization for unresectable hepatocellular carcinoma: an Asian cooperative study between Japan and Korea. J Vasc Interv Radiol 24(4):490-500, 2013

化学療法(抗がん剤療法)

化学療法は抗がん剤を用いた治療法です。肝障害が「軽度~中等度」で、がんの数が「4個以上」の進行肝臓がんの患者さんが対象となります。

少し前まで、進行した肝臓がんに効く抗がん剤はほとんどありませんでした。しかし最近になって「ソラフェニブ」という薬が登場し、治療の幅が大きく広がりました。

ソラフェニブは「分子標的薬」という新しいタイプで、
①がん細胞が増え続けるのを抑える、
②がん細胞に栄養を送る新しい血管が作られるのを邪魔する
という2つの働きによってがんの進行を抑えます。

ソラフェニブの効果は臨床試験で実証されています。たとえば、進行肝臓がん患者さんを対象にしたSHARP Study(602例)というヨーロッパで行われた試験では、プラセボ群に比べ、ソラフェニブを投与した群では生存期間と、がんが増悪するまでの期間が有意に延長することが示されました。

N Engl J Med 2008;359:378-90

一方、副作用としては、手足の皮膚に発疹や腫れ、痛みなどが出る「手足症候群」や「湿疹」などが現れることがあります。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を死滅させる治療法です。肝臓がんの場合、放射線が肝臓に悪影響を及ぼすため、これまであまり実施されてきませんでした。ところが最近、「陽子線」や「重粒子線(炭素イオン線)」を用いた新しい放射線療法が実用化され、肝機能を低下させることなく、肝臓がんを治療できるようになっています。

対象となるのは肝障害の程度が重く、手術や局所療法(肝ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法)が難しい進行肝臓がんの患者さんです。これまでのデータでは高い再発予防効果が得られています。

ただし、陽子線治療も重粒子線治療もいわゆる先進医療で、1回の治療で約300万円の費用がかかります。

肝臓移植

肝臓移植は、悪くなった肝臓を、他の人から提供してもらった肝臓で置き換える治療法です。肝障害度が重度(C)で、がんの数が単発で5cm以下、もしくは3個以下、がんの大きさが直径3cm以内、65歳以下、血管浸潤を伴わない、遠隔転移を伴わない患者さんが対象になります。

肝臓移植には「脳死肝臓移植」と「生体肝臓移植」の2つがあります。脳死肝臓移植は、脳死となった方から、肝臓の提供を受けて移植する方法です。一方、生体肝臓移植は、患者さんの肝臓をすべて摘出し、臓器を提供する人(ドナー)から健康な肝臓の一部をもらい、それを移植します。現在、日本ではこの生体肝臓移植が主流です。

肝臓がん・胆のうがんの主な資料

  • 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013」、金原出版
  • よくわかる最新医学、泉並木著、肝臓病の最新治療、主婦の友社 2012年
  • 矢永勝彦、脇山茂樹著「肝臓がん」といわれたら 保健同人社 2012年
  • 国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」
    http://ganjoho.jp/
  • 国立がん研究センターがん対策情報センター:がんの冊子、各種がんシリーズ「肝細胞がん」2015(3版)
  • 東京医科歯科大学肝胆膵外科ホームページ「胆道の病気と治療―胆嚢がん」
    http://www.tmd.ac.jp/grad/msrg/gallbladder/gallbladder_cancer.html
  • 日本肝臓研究会編「臨床・病理原発性肝癌取扱い規約(第5版)金原出版
  • 東邦大学医療センター大森病院消化器センター外科ホームページ

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