脳腫瘍の種類別にみた特徴と治療

神経膠腫(グリオーマ)

神経膠腫とは

神経膠腫は、脳の神経細胞を支える神経膠細胞(グリア)から発生する腫瘍です。原発性脳腫瘍の約4分の1を占めます。ほとんどが悪性腫瘍ですが、種類により悪性度は様々です。毛様細胞性星細胞腫は最も悪性度の低いグレード1、びまん性星細胞腫、乏突起神経膠腫などはグレード2、退形成性星細胞腫、退形成性乏突起神経膠腫などはグレード3、膠芽腫(こうがしゅ)は最も悪性度の高いグレード4に分類されています。

神経膠腫の治療

神経膠腫の治療は、手術でできる限り腫瘍を取り除くことが基本になります。しかし、グレード3以上の神経膠腫は、完全に取り除くことが難しく、再発を予防する、あるいは遅らせる目的で術後に放射線療法や化学療法を追加します。ただし、グレード3以上の神経膠腫では、放射線療法の効果が不十分な場合が多いとされています。また、特殊な放射線療法である粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)は、先進医療として認可され治療が行われています。術後再発に対しては、再手術による最大限摘出、化学療法や分子標的治療、免疫療法、放射線治療などを行います。

髄膜腫

髄膜腫とは

髄膜腫は、脳を包む膜(髄膜)から発生する腫瘍です。神経膠腫と同様、原発性脳腫瘍の約4分の1を占めます。ほとんどは良性腫瘍で、初期は症状が出ない場合が多いため、脳ドックで偶然見つかるケースが増えています。50~60歳代を中心とする成人に多く発症します。女性の発症率が男性より約2倍高いとされます。

髄膜腫の治療

増大の速度が遅いこともあり、すぐに手術を行わず、経過を観察しながら手術のタイミングを計る場合が少なくありません。すでに症状が出ている場合は手術による治療が一般的ですが、腫瘍の部位、悪性度によっては放射線療法が選択されます。抗がん剤の効果は低いと考えられています。まれに急速に増大したり、転移する悪性髄膜腫が見られたりしますが、その場合も放射線療法が行われます。

下垂体腺腫

下垂体腺腫とは

下垂体は、頭がい骨の底にある、トルコ鞍(あん)と呼ばれる1cm程度の骨の凹みにぶら下がっている組織で、様々なホルモンを分泌しています。この下垂体の一部が腫瘍化するのが下垂体腺腫です。原発性脳腫瘍の約15%で、成人に多く発症します。ほとんどが良性腫瘍ですが、腫瘍が大きくなると、近くを通る視神経を圧迫するため、視野・視力障害が現れます。

下垂体腺腫には、ホルモンを産生する腺腫と産生しない腺腫があり、その比率はほぼ3対2です。産生するホルモンの種類により、「プロラクチン産生腺腫」、「成長ホルモン産生腺腫」、「副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)」に分けられ、症状は次のように異なります。

プロラクチン産生腺腫

赤ちゃんを産んだ女性に乳汁分泌を促すホルモンであるプロラクチンを産生する腺腫です。ホルモン産生腺腫の中で最も多く、3~4割を占めます。若い女性に多く発症します。乳汁分泌、生理不順、無月経などの症状が見られます。ブロモクリプチンなどのドパミン作動薬が有効です。

成長ホルモン産生腺腫

ホルモン産生腺腫の約20%に見られます。思春期に発症した場合は身長や手足が異常に伸びます。成人後に発症した場合は手足の先、あご、舌などが肥大します。成長ホルモンが過剰な状態が長く続くと、糖尿病、高血圧などを合併してきます。一部の患者さんではドパミン作動薬が効果的です。オクトレオチドという注射薬も有効ですが、高価です。

副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫症状(クッシング病)

比較的珍しいホルモン産生腺腫です。若い女性や中年女性に見られます。腹部肥満、顔が丸くなる、にきび、体毛が濃くなる、下腹部に青紫色の線が出るなど、特徴的な症状が現れます。しばしば糖尿病や高血圧を合併します。また、筋肉萎縮や骨密度低下により、骨折が起こりやすくなります。

下垂体腺腫の治療

プロラクチン産生腺腫や成長ホルモン産生腺腫のように、有効な薬があるものを除き、手術が基本となります。手術は鼻の孔から行う方法が一般的です。

シュワン細胞腫(別名/神経鞘腫:しんけいしょうしゅ)

シュワン細胞腫とは

シュワン細胞腫は、神経を鞘(さや)のように取り巻いて、電線の絶縁体のような役割を果たしているシュワン細胞に発生する腫瘍です。脳では、聴神経(聴覚を脳に伝える神経)に起こるものがほとんどです。そのほか、三叉神経(顔の感覚を脳に伝える神経)や顔面神経などでも認められます。症状は腫瘍の部位によって異なり、聴神経では耳鳴り、難聴、めまいなど、三叉神経では顔の痛みやしびれが現れます。

シュワン細胞腫の治療

基本的に良性腫瘍であるため、手術で完全に取り除ければ治ります。腫瘍が小さい場合は、放射線療法だけで腫瘍の増大を長く抑えることも可能です。

転移性脳腫瘍

転移性脳腫瘍とは

転移性脳腫瘍は脳腫瘍全体の20%近くを占めます。肺がん、乳がん、消化器がんなどからの転移が多いとされます。症状は原発性脳腫瘍と同様で、腫瘍が脳を圧迫する部位に応じた種々の局所症状や頭がい内圧亢進症状が現れます。

転移性脳腫瘍の治療

治療法を決める際には、脳腫瘍の進み具合だけでなく、全身のがんの状態や合併症、体力などを含めて考えます。総合的な検討から予想される生存期間によって治療法を選ぶという考え方があります。例えば、予想生存期間が6か月以上で脳腫瘍が単発の場合は、手術と全脳照射(脳全体への放射線照射)を行いますが、腫瘍が多発している場合は手術を行わず、全脳照射+定位照射(腫瘍に集中的に放射線照射)を行います。また、予想生存期間が3か月以内であれば、手術や放射線療法は避け、脳の腫れを抑える薬を投与するというように、症状を軽減する治療を行います。転移性脳腫瘍は完全に治すこと(治癒)が難しいため、良好な生活の質(QOL)の維持を目指すことも重要になります。

子どもの脳腫瘍

子どもでは、脳腫瘍は白血病などの造血器腫瘍に次いで多く見られます。成人とは逆で、悪性腫瘍が3分の2を占めます。子どもに多い脳腫瘍は、神経膠腫、胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)、頭蓋咽頭腫などです。症状は成人の脳腫瘍と同様ですが、症状があっても周囲にうまく伝えられないことがあるので注意が必要です。子どもの脳腫瘍は脳の発育に大きな影響をもたらしますが、治療も脳の発育に影響する可能性があります。治療後しばらくして発育障害、学習障害などの合併症が起こってくることもあります。このため、成長発育を考慮した治療法の検討が必要になります。

主な参考資料

  • 小林正伸著(2014年)「やさしい腫瘍学」(南江堂)
  • 篠浦伸禎著(2015年)「脳腫瘍 機能温存のための治療と手術」(主婦の友社)190ページ
  • 渋井壮一郎 BRAIN and NERVE 64(3): 286-290, 2012

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