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臓器横断的に効果が望める免疫チェックポイント阻害薬 課題は投与対象の絞り込み

※本記事は、2016年11月号「がんサポート」に掲載されたものです。

第54回日本癌治療学会学術集会特別講演会場

免疫チェックポイント阻害薬オプジーボの登場で脚光を浴びるがん免疫療法。現在の承認は皮膚がんと肺がん、腎がんのそれぞれ一部に対してだが、そのほかのがん種への応用も盛んに研究されている。10月20~22日に横浜市で開かれた第54回日本癌治療学会学術集会(JSCO2016)では「がん免疫療法:特に免疫チェックポイント阻害薬」と題された教育セッションも行われ、臓器横断的な開発の現状が報告された。その概要をまとめた。

<免疫療法の基礎>がんの免疫逃避機構を阻止する薬剤の開発

初めに、関西医科大学附属病院乳腺外科の杉江知治さんが免疫療法の基礎を概観した。

腫瘍免疫の成立にはステップがある。まず腫瘍が抗がん薬や放射線で破壊されるとその中から抗原が放出される。それが抗原提示細胞である樹状細胞に取り込まれ、樹状細胞は所属リンパ節において細胞障害性T細胞(CTL)に情報を与える。CTLは攻撃先が特化された細胞となって腫瘍のある場所に移動していく。そして、樹状細胞から教えられた抗原を出す腫瘍の細胞に侵入して攻撃する。

これまでも様々な免疫療法が行われてきた。受動免疫療法と言われるものは、免疫反応を担うリンパ球をいったん身体の外で活性化してから再び身体に戻すもの。最近ではCTL遺伝子導入技術を用いて抗原特異的な性質を与えて戻す方法もある。一方、能動免疫療法は、本来持っている免疫を活性化させるもので、ワクチン療法とも言われる。

しかし、さらに研究が進むと、CTLががん細胞を攻撃しようとしても、CTLに発現するPD-1という物質と、がん細胞に発現するPD-L1という物質が結び付くとCTLは攻撃を止めてしまうことがわかった。そこで、近年盛んに行われているのが、がんの免疫逃避機構を阻止する薬剤の研究開発で、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれている。

2005年に皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)と腎がんでの効果が認められたが、杉江さんは「今では様々な臓器に効果がある。これほどまでに臓器横断的であることが免疫療法の特徴」と述べた。まず、ヤーボイ、オプジーボが開発され、両者の併用は単独よりも改善効果が高かった。

当初はPD-L1の発現が免疫チェックポイント阻害薬の1つのバイオマーカーになるのではと考えられたが、奏効率ではPD-L1陽性が36%ほどだったが、陰性でも20%前後で薬剤に反応し、治療効果が望めることがわかった。「免疫チェックポイント阻害薬の適用を決めるのにPD-L1だけではなかなか決められない」とした。

一方、次世代シークエンサー(DNA配列の自動解読装置)の登場によって、腫瘍のゲノムの中に変異が蓄積されているとわかってきた。変異があるものすべてが抗原であるわけではないが、変異の多いほうがチェックポイント阻害薬の効果があることがわかっている。また、変異の高いがんほど予後が良好だった。

「腫瘍側はゲノム上の変異が多いのか少ないのか、PD-L1の発現が高いか低いか、これらを総合してバイオマーカーを開発しなければならない。それが個別化免疫療法への開発になると思う」と述べた。

ヤーボイ=一般名イピリブマブ(抗CTLA-4抗体) オプジーボ=一般名ニボルマブ(抗PD-1抗体)

<メラノーマ(悪性黒色腫)>ステージⅣ(IV)でも治癒する時代が到来

続いて国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科の山崎直也さんがメラノーマにおける免疫療法の現状を話した。

メラノーマを含む皮膚がんは、10年前は罹患者が年間9,000人ほどで、そのうちの12%がメラノーマだった。それが現在は2倍ほどにあたる2万人弱まで増えており、約700人が死亡している。この数は過去40年でみると4倍にあたる。

メラノーマは、免疫チェックポイント阻害薬の登場以前はステージⅣ(IV)でも手術をしており、薬剤もダカルバジンしかなかった。それが2014年のオプジーボ承認で世界が変わったという。「免疫療法は第4の治療法と言われていたが、進歩が目覚ましい。いったん効いたら緩やかに、長く効果が継続する。4番目から地位も上がっていくだろう。効果があるのかと言われていた時代から、今や間違いなく免疫療法が薬物療法の中心になる時代がやってきている」と述べた。

海外では5年ほど前にブレークスルーがあった。免疫チェックポイント阻害薬とBRAF遺伝子変異をターゲットにした分子標的薬が開発に成功したためだ。山崎さんは米国などの臨床試験の結果を示し、「ステージⅣ(IV)でも治る時代が来ている」とした。

一方で、新しい分野の薬剤だけに副作用への懸念もある。下痢・大腸炎、間質性肺炎、ホルモン異常、肝障害と皮膚の痒(かゆ)みの5つが代表的だが、免疫にかかわる副作用が体中に現れる。程度に差はあるが、痒みが多くみられるが、激症1型糖尿病のような生命にかかわる副作用も発現しているので注意喚起が必要という。

山崎さんは「長い間の注意が必要。ヤーボイは症状が重くなる程度が強い。ニボルマブは皮膚障害の白斑が出たほうが予後が改善されているとの報告がある。副作用が強い場合には予後が良くなるサインとの示唆もされている」とした。

併用も研究されており、ヤーボイとオプジーボの併用療法の第Ⅲ(III)相臨床試験では、併用療法とオプジーボ単剤療法の両方ともヤーボイ単剤療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)で上回った。

山崎さんは「今後、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用が考えられるが、効果と安全を考慮してどの時期に使うかということを見極めなければならない。分子標的薬との併用もある」とした。

ダカルバジン=一般名ダカルバジン

<肺がん>非小細胞肺がんにオプジーボの適応拡大 費用対効果の問題も

肺がんでは、北里大学医学部新世紀医療開発センター・横断的医療領域開発部門臨床腫瘍学の佐々木治一郎さんが解説した。肺がんに関しては肺がんの約9割を占める非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、15年12月にオプジーボの適応拡大が承認されている。オプジーボを使った治療は、再発転移での延命とQOL(生活の質)の維持が目的となる。

PS(全身状態)が0か1のような患者に使用するが、間質性肺疾患や重篤な口内炎も発現してくるので全身管理が大切になる。結核の症状がひどくなったケースや膵炎の発症もあったという。

今後の展開としては、効果予測因子が必要であるとした。佐々木さんは「オプジーボを使用してもPD(進行)が40%以上と、効かない人が4割もいるということで、効果を見極めていく必要がある。費用対効果の問題もこの過程で片付いていくと考えている」とした。

<腎がん>分子標的薬との併用に期待

腎がんについては、秋田大学腎泌尿器科の羽渕友則さんが発言した。オプジーボは16年8月に根治切除不能または転移性の腎細胞がんに対して適応拡大されている。

オプジーボが既存薬のアフィニトールと比べて優れているのは、予後不良、貧血、治療開始までの時間とされる。

今後は分子標的薬との併用が期待される。血管新生阻害薬(スーテント)と免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ+ヤーボイ)との第Ⅲ(III)相試験が日本を含めて行われている。羽渕さんは「腎がんではTKI(チロシンキナーゼ阻害薬)との併用の可能性がメインになる。尿上皮がんでは化学療法との併用が研究されている」とした。

アフィニトール=一般名エベロリムス スーテント=一般名スニチニブ

<婦人科がん>未開の領域だが抗がん薬との比較試験進む

婦人科のがんについては近畿大学産婦人科の万代昌紀さんが説明し、「婦人科でも多くの研究がされているが、まだ開発途上であり、臨床経験がない。まだまだ始まったばかり」と今後の展開への期待から話を始めた。

婦人科における免疫チェックポイント阻害薬の開発では、万代さんらが11年から第Ⅱ(II)相試験を行った。13年に発表された結果では、抗がん薬が効きにくい明細胞腺がんが、「非常にきれいに消失していて驚いた」(万代さん)という。その後も卵巣がんと子宮頸がんで、抗がん薬との比較試験が進められている。

万代さんは、治療集団をいかに小さくするのかが課題とした。「医療自体の考えが変わってきており、OS(全生存期間)を伸ばしても仕方がない。QOLのいい状態でのサバイバルでなければ意味がないのではという時代になり、薬価自体も効かなければ支払えないという方針だ」と述べた。

<頭頸部がん>免疫チェックポイント阻害薬が効果発揮の可能性 対象の絞り込みが課題

頭頸部がんでは神戸大学附属病院腫瘍血液内科の清田尚臣さんが報告した。

一般的に頭頸部はリンパ球が少なく、抗原提示能力が低いなどの特徴がある。中咽頭がんではHPV(ヒトパピローマウイルス)が関係しており、PD-L1の発現強度が強いと言われている。予後との関係はPD-L1の発現が高いほど悪い。免疫チェックポイント阻害薬が頭頸部がんに効果を発揮する可能性があると考えられる。

オプジーボが適応追加に向けて動いている。「対象の絞り込みが課題。治療戦略においてどう位置づけるかが課題」と述べた。

<消化管がん>大腸がんでの感受性の高さに期待

食道・胃・大腸がんなど消化管がんについては愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の室 圭さんが報告した。

食道がんでは、日本で行われた第Ⅱ(II)相試験では奏効割合が17%だった。胃がんでは、キートルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬が注目されている。第Ⅱ(II)相試験では、全奏効率でキートルーダが22%、オプジーボは14%だった。

大腸がんは、感受性の高さからかなりの奏効が期待できるという。「課題はバイオマーカー。どういったことが必要かは今後検討されるべき」と述べた。

キートルーダ=一般名ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)

第54回日本癌治療学会学術集会(JSCO2016)レポート
取材・文●「がんサポート」編集部
(2016年11月)

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